むらたビトvol.1.(有)櫻中味噌店代表取締役 櫻中辰則さん

「自らの背中で語る、地域の次世代育成」

(有)桜中味噌店代表取締役 櫻中辰則さん

むらたビトインタビュー、記念すべき第1回目は、村田で熱い人と聞くと決まって名前が上がる桜中味噌店の代表取締役「櫻中辰則(さくらなか・たつのり)さん」にお話をお伺いしてきました。

初めてのイベント参加で衝撃を受け、商品開発へと踏み出す

桜中味噌店の3代目代表取締役となった櫻中さん。最初はお店を継ぐ気はなかったものの、東京農業大学醸造学科に進学します。いずれは帰らなければいけないと覚悟を決めていたそう。

桜中味噌店は昔から「仕込み味噌」という各家庭から豆やお米を出していただき、それを委託加工する形式でした。そのため、当時は販売する商品がいっさいなかったと話します。

しかし、初めて声を掛けられたイベントへの出店が櫻中さんの向上心に火がつくきっかけとなりました。

当時、出店用の商品がなかったために、ありったけの味噌をかき集め、5kgの味噌をもってイベントに臨んだところ、そんな重いの買うわけないでしょ!って怒られ大恥をかいたそう。それがきっかけで1㎏の商品を作ることとなりました。

ゆくゆくは仕込み味噌もなくなる。どうせやるなら、製品を作っていこうと桜中味噌店が始まって以来、初めての商品開発に挑戦することになります。

最初は「蔵出し味噌」の一つだけで始まりましたが、現在の商品のバリエーションは6種類。

 

「味噌って結果が出るまで一年かかるんですよ。失敗したらまた1年遅れてしまう。6種類のうちの一つ、「粋」を完成させた時の感動は今でも忘れられない。」と話します。櫻中さんのなにもないところから生み出していく根気強さが伝わってきます。

一度、村田を離れたことで芽生えた地元への愛着

そんな櫻中さんは味噌店だけではなく、これまで地域で様々な役割を担ってきました。

「宮城県PTA連合会長」、「教育委員」、「商工会青年部部長」、陶器市を通してまちづくりを行う「NPO法人蔵わらし」など、この他にもたくさんの役割を担ってきており、その理由についてお話を伺ってみました。

 

「一度、東京に出たことで、東京では感じることのできない良さが自分のまちにはあるんだなって思った。それに気がついてからいろんなことをやってきた。」と話します。

「この町は先人が作ってきたもの。先人から受けたものを私たちは次の代に返さなければいけない。自分がさぼってしまったら次の人たちはやろうとも思わなくなってしまう。」それがいろんなことに挑戦してきた理由なのだそう。

 

 

次世代が安心して挑戦できる環境づくり

「人はどうしても易きに流れてしまう、だからこそ、勝ち癖をつけるようにする必要がある」

現在、櫻中さんはNPO法人蔵わらしの活動を通して、思いを同じにした仲間と一緒に若い世代に挑戦する機会を提供しています。

今、地域で中心になっている人たちは手放す勇気、次の世代を育てる勇気が必要だという。若い世代よりも少し先輩の私たちがこの一歩を踏み出す勇気をもつと、この町はすごくよくなるんじゃないかなと思う。

また、何事も大人のすることに失敗ってなくて、失敗を失敗としてしまう人がいるからそうなってしまうだけ。若い人たちに思い切って挑戦してもらうことの重要性を語ります。

櫻中さんから発する言葉の節々からは、若者が安心して挑戦できる頼もしさを感じます。

見えてきた次の夢、「子どもたちにさまざまな体験の機会を!」

次世代育成に力を入れている櫻中さんですが、もう一つ先に見据えている夢があります。

 

「ちょっと話すのが恥ずかしいけど・・・こうなったらいいなという理想があるんです」と語ります。

 

例えば、村田の子どもたちが外に出たとき、周りから「なんでろくろなんてひけるの?」って驚かれ、村田町の子どもたちはこう返す。「村田ではそれが普通だったよ」って。こういうのってなんかよくないですか?と笑顔で話される櫻中さん。自分たちにとっては当たり前だったことにびっくりされるみたいな感じ。

 

 

 

また、10年後、20年後にいろんなことを仕掛けて活躍している人の出身を聞いたら、なんか宮城県の村田町なんだってよ!ってなるといい。もちろん、すぐには結果が出ないと思う。それでも、今から子どもたちに様々な経験をしてもらって、自分の考えをもってもらう。そして、それを人前で発表してもらったりできるようになったらいい。

大半の人は人前で話すことって得意じゃない、それは意思を伝えることができないから難しく感じてしまう。訓練がされていないだけ。意思を伝えることができれば、人を動かすことができる。そうすると、自分が言っていることに共感する人が生まれる。一人でも自分の考えに共感してくれる人がいてくれたら安心じゃないですか?まちづくりも同じで、自分に言ってくれることに共感してくれる人、わかってくれる人がいるからこそ、がんばれる。

こどもたちにもそんな経験をしてほしいから、今後は経験ができる場づくりをしていきたいと話します。

 

櫻中さんが地域で見せる行動はこれからを担う若い世代の気持ちをも動かす可能性を秘めていると感じました。

 

現に、今、櫻中さんのお子さんたちは自らの意思でお店を支えていこうと戻ってきています。櫻中さんは一言も継いでほしいと言っていなかったそう。それでも集う。それこそが日頃から櫻中さんが見せている背中の証なのではないでしょうか。